時間の感覚というのは，本当に不思議だ。
あとで振り返ると一瞬なのに、その時はこんなにも長い。
１メートル歩くだけでも泣きたくなるのに、あんなに長い距離の移動が全部繋がっていて、同じ１分１秒の連続だったということが信じられない。
この１年や、ついこのあいだ入ったばかりのような気がする高校生活や、もしかしてこの先の一生だって、そんな「信じられない」ことの繰り返しなのかもしれない。
恐らく、何年も先になって、やはり同じように呟くのだ。
なぜ振り返った時には一瞬なのだろう。
あの歳月が、本当に同じ１分１秒毎に、全て連続していたなんて、どうして信じられるのだろうか、と。
恩田陸 『夜のピクニック』より抜粋
気が付けばもう不惑を越えていました。
歳を経るにつけ、時の流れがどんどん早く感じられます。
人生という物語の中で、振り返る部分が増えていくからなのでしょうか。
心に翼が生えたかのように楽しかった事、地面が崩れ落ちそうになるほど辛かった事などもあったように思いますが、正に
『振り返ってみると一瞬』 です。
人生を８０年としてももう折り返し地点。
とは言え、この先どれほどの頁が残されているのかは知る由もない事ですが、最後の１頁となった時、素晴らしい小説を読み終えた時のような『あっという間だったけれど、良かった』と思えるようでありたい、と思います。
